freelance (part2)
さて、前回の続編です。私なりのフリーランスの仕事とは・・・
ちょっと逆戻って去年の春の話です。
2019年4月にCentral Saint Martinsであった展覧会で、私の作品を見てくれた人から、アート作品のオーダーをもらっていたのですが、コロナのこともあって、今年2月の出来上がっていた作品を、ようやく6月にデリバリーしました。これは2転3転、途中で大揉めに揉めて・・・ようやく作り終わりました。
私はテーブルウェアを作る以外に、『Framed Sculpture』という名前の、フレームの中に入ったインスタレーションを、絵画を見るよう楽しむというコンセプトで作っています。3Dの陶芸オブジェがフレームに入っていて、壁に作品がかかっているので、人の目線の高さで見ることができます。
コミッションを受けるプロセスとしては・・・
はじめに、私が何個か簡単なドローイングを描いて、そこから気に入ったものを選んでもらいます。
その後、しっかり詳細も含めてドリーイングを描き、何回か修正しながらやりとりした後に、ゴーサインをもらいます。
そのドローイングに沿って石膏でモデルを作り、そのモデル(凸)を使ってモールド(石膏の鋳込み型 凹の部分)を作って最終的な形Slip-castingで形を作り、その後、デコレーションして作品を作ります。その後は焼成や施釉のプロセスを踏んで、最終的な作品が出来上がります。
しかし、手捻りや、ろくろで作った陶芸の作品とは違い、モデルとモールドを作った時点で、もう形を変えることはテクニック的に無理なんです…(これは今回の”カフェオレボウル事件”でも重要なところなので、覚えておいてください。)
作品が大きければ大きいほど、とてつもなく時間がかかる作業なので、クライエントの人に経過報告するにも1カ月2ヶ月後です… ようやくモデルは作り終わり、何個かモールドを作り始めていた時点で、ドローイングと今作っているイメージが違うとその人に言われてしまいました。(時間がすぎて忘れてしまったのか、最終的に同意したものから、一つ前のドローイングを見ていた模様)
結局、何個かモデルとモールドを作り直したのですが、本当に忍耐と根気が要りました・・・作品をオーダーしてくれる人は、個性的な人が多い。
去年の春にもう一人違う人から、同じようなシリーズのアート作品のコミッションをもらっていました。しかし、この人は最終的なサイズの要望と、私が描いた簡単な線だけのドリーイングを選んだだけで、私の作品が好きだし、信用しているので、それ以降は自由にやってくださいと言ってくれたのです。
実はこのクライエントに頼まれて作った作品が、今まで作った中で自分な好きな作品のトップ5に入るくらいの出来上がりになりました。ある程度決めてもらった枠内で自由に作るということが、いかに大事なことか!!! 次回アート作品のコミッションを受けるときは、サイズとラフドローイング以外は自由にさせてもらいます!と初めに言うべきですね。
そして今回のメインの話題は・・・テーブルウェアーのコミッションです。アート作品とは違って、使えるものにならないといけないということが重要。
今回の事件を掻い摘んでいうと・・・1ヶ月以上ずっと毎日のようにやりとりだけして、ドローイングを何時間もかけて何個も描き、向こうの要望にサイズも形も合わせてモデルとモールドもつくり、焼き上がった作品のサンプルの締め切り日は、そのボスが違う国に飛行機で旅立つ日・・・緊張の連続の毎日で、サンプルを死ぬ気でデットラインに間に合わせたにもかかわらず・・・「こんなのいらないっ!」て言われてしまいました。
はじめは会社で働くA君という人から連絡をもらい、メールのやり取りをしていました。
一対一のメールのやり取りが、返信に会社のスッタフが数人加わりました。
A 君は、メールではなくてWhatsApp でのやりとりにして欲しいというのでWhatsApp のグループでのメッセージのやりとりになりました。(いつも学校のクラスのお父さんお母さんたちとやりとりするアレです。)
ここからが地獄の始まり・・・
ボスのB氏が、メッセージにどんどん入ってきて、会話のようにメッセージを書いて残していき、その質問の大半が、私がすでに前のメッセージやメールで情報提供しているものだったりするんです。
連続で残すB氏のメッセージは独り言のようであり、例えば6つメッセージを残していくと、1つ目のメッセージで書いたことと、6つ目のメッセージで書いたことの意見が変わってたり、翌日は質問責めだったり・・・
私は丁寧に全ての質問に答えていきました。プロダクトのイメージを固めるために、私も質問を出しました… でも私の質問にはほとんど答えてくれません… B氏は忙しい人なんだろうけど、私は仕事でWhatsAppを使ったことがなかったので、かなり戸惑いました。
私は質問の答えがないと、次のプロセスに進めないし、デットラインもあります。仕方ないので、始めにやりとりをしていたA君に電話して質問してみました。そしたら・・・”私はアーティストの発掘が主な仕事なんで、今のやりとりはあんまり関係ないし煩わせるな”と、ブチギレられてしまいました。
も、もしかして、私、すごいキャラのボスB氏の面倒を押し付けられてる?
だからWhatsAppのやりとりに変更した?
私はテーブルウェアのプロダクトと供給するだけで、その会社で働いてないし、まだ何も代金は何も支払われてもいません。そして、B氏の制作して欲しいと言われる要望も興味もカップだったり、ボウルだったり、花瓶だったり、いろんな方向に行くし…こちらも流石に疲れはててきました。
メールであれば今までのやりとりを見返すのも簡単なのに、WhatsAppだと、画面のスクロールし続けてようやく、ここで誰が何を言ってたかわかりるので、ビジネスのやりとりには不向きですよね?
なので、A君にWhatsAppのやりとりをやめてメール交換にしたいと言いました。そうしたら、今までのやりとりを、全部をリストアップしたオンライン上のドキュメントを作ってくれたのですが、ボスB氏は、そのA君のしっかりまとめられた重要なファイルをきちんと見てくれてなさそうなんです・・・またもやWhatsAppのメッセージ交換に戻ってしまいました。
結局いろいろありましたが、最終的にカフェオレボウルを作るということで決まりました。デットラインもあるし、今すでに存在するモールドで、カフェオレボウルに使えそうなボウルの写真を見せたのですが、「小さすぎる」と言われ、新しく15−20%大きめでモデルとモールドを制作することになりました。サイズ確認もしっかりして、ドローイングで形も確認しました。上記に書いたようにモデルとモールドを作った時点で最終的なサイズと形は変更不可能なので、モデルを作った時点で動画も写真もWhatsAppで送り、これもしっかり確認しました。
そしてデットラインがやってきました・・・なんとB氏のフライト3時間前に、窯を開けて、焼き上がりホヤホヤのサンプルを包装して、デリバリーをアレンジして間に合せました!
燃え尽きて、ようやく終わったと安堵していた次の日です・・・サンプルを包装を開けて見たという氏からWhatsApp のグループにメッセージが…
大きいすぎるし、美しくない。
えええ〜!サイズは焼き縮みも考慮して、ほとんどリクエスト通りに仕上げたんですが?!
あの、モデルの形も何度も何度も確認しましたが?!
しまいには、「これはカフェオレボウルじゃなくてヌードルボウルだよ」と言って、その私が悪戦苦闘して作り上げた、カフェオレボウルのサンプルを使って、何か食べてる写真が、WhatsAppのグループメッセージにアップされていました・・・
それを見た私は・・・
震えが止まりませんでした。そして目には涙が・・・
もしかして、このメッセージは私に対してじゃなくて、 WhatsAppのグループに入っている、会社の他のスタッフに向けてのメッセージだったのかも知れなかったですが・・・ 自分がいくら努力していろんなことを真摯に取り組んでも報われないこともあると、そして、仕事やプロジェクトが成功するかどうかは、自分の努力はもちろんのことだけど、周りと状況次第だなと学びました。
ああ、学びましたが、わかっているけど、辛い!!!
それでもチャレンジしていくのがフリーランスのベースにある心得! 精神的にも強くないといけないし、先を見越して、いろいろ予防・処理する能力も試されます。今回のことでも反省点も沢山あります。気を回せば、回避できたことも絶対ある! コロナ渦で、心身ともに沈まず乗り切っていきたいものです。
(あ、でも、ちょっとだけ現実逃避して自分を癒してあげます・・・)
****つぶやき**********
*長々と独り言のような投稿にお付き合いくださって、本当にありがとうございました。こんな仕事をしていると、出会う人の大半はなかり個性的です。普段はスタジオで一人。無菌状態に近いので、相方にカフェでバイトでもして、人に揉まれてこいと言われています。はい、一理ある。
*自分の独り言のような記事が続いてしまいましたが、次回は「ダークチョコレート 」や、「観葉植物」の記事のように、皆さんに有意義な情報を投稿できるようにしたいです。
*最近焼いたパンで美味しかったもの。Hackney Marchesで見つけた梨の木。木登りして何個か頂いてきて、酵母液を作りました。ブラックベリーの酵母パンを超えました。すごく美味しかったです。
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