イギリスで車屋の女房になる…ある一日編
私が夫に出会った当時も、そしてウインブルドンで一緒に暮らし始めてからも、夫は映画プロデューサーになりたくてカンヌやベルリンへ出掛け、プロモーション活動を続けていました。カナダ付近からメキシコ北部までまたがったドキュメンタリーを撮りに行った事も。ヘリをチャーターして撮影したとか何とか。
ところが、二人目が産まれるといきなり家業の自動車売買に戻る事になりました。実家が長らくディーラーをしていて、夫は早目のリタイアをしたような感じでした。優雅な独身生活のように散財してばかりいては生活が成り立たないと自覚したのでしょうか、笑
そうして十年近く経ちました。夫が若い頃からのお客さんは車種を指定して買い付けの依頼をしてきます…
例えばハイブリッドのランドローバー…今から予約を入れたとしていったいいつ納車になるのかは不明。
ジャガーの最新モデル…これは意外に待たずに納車になりました。あれこれオプションをつけなければ早いらしいです。
アウディTT…スポーツカー好きな二十代女子に人気です。アウディは若い世代に人気。デザインがスッキリしているのでメルセデスのガチガチ感が嫌な人は乗り換えます。
£1000くらいの学生用マニュアル小型車を買い付けると、すぐに免許取り立てのティーンや学生が買いに来ます。
人気があるのは£3000くらいのファミリーカーで1歳未満の赤ちゃんのいる若い夫婦がカーシートを用意して買いに来ます。
日本人のお客様はオートマ車ご希望がほとんど。
今では私も車の価格に詳しくなり、買い付けの際には口を出す程になっています(だって家計に響きますからね)
イギリスでは、中古車売買がかなりのマーケット規模になっています。日本の新車神話は何処へやら、驚くくらい古い車からいわゆる新古車までがディーラーと一般人入り乱れて売買されています。
イギリスで生活すればすぐに分かることですが、全く信用出来ない電車時刻表と高い運賃、12歳以下の子供を一人にしてはいけないという法律が需要を高めていると思われます。
それに、イギリスらしい天気も影響しているのでしょうか?
毎日、いつ降るかわからない雨の中、子供を連れて歩くことを想像するだけで疲れますよね。
先日、最近の世相を表しているような一日がありました。
朝、ブルーの髪をした妊婦さんが小型車を探しにきてオレンジのトヨタAygoを選び、幸せそうな顔をして手付金を払っていったそうです。
昼前には、夫のガレージの近くに住む住人数人の代表から電話があり、急に六ヶ月間毎日病院通いをしなくてはいけなくなった隣人のために£200ずつ出し合って小型中古車を買ってやりたい…という相談。
午後一番で、高齢の家族が亡くなったので車を引き取りに来てほしいという電話。
夕方には、高齢の男性から妻が病気でこの先長くないので妻の車を売りたいから見に来てほしいという電話。
夫曰く、「ひとの生涯のサイクルを見ているような一日だった」と…
夫は電話をもらった時点で、見積もり価格と支払いを約束していました。「お金が要るだろうから」
車屋の女房としては
「車を見ないうちに支払いを約束するんじゃないよ」
と言いたい所ですが
クリスチャンである夫の傷んでいる人に優しくしてあげる行為を責める訳にいかず、黙って微かに微笑んだフリをしていたのでした。
「ウチは慈善事業をやってるんじゃないんだよ」
と、よくテレビから聞こえたセリフが頭の中でガンガン響きます。あれはドラマではなく現実でした。車屋の女房は辛いよ…
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