Crisis ボランティア体験②
こんにちは。昨日日本から帰って来たばかりのふあにゃんです。日本は家の中が寒くて、イギリスのセントラル・ヒーティングが恋しかったです!昔はセントラル・ヒーティングの方が寒いと思っていたのに、だんだん体がイギリス生活の方に慣れてきているのかもしれませんね~。もう日本には住めない体になってしまったのかも。。。涙
さて、今日も昨日からの続きで、 夫のボランティア体験記です。ホームレス支援のチャリティ団体、Crisis が1週間だけオープンするクリスマス・センターとはどんなところなのか、長くなってしまいましたが読んでいただければ幸いです。
夜間シフト
ボランティア2日目は夜間シフトで午後10時15分にスタートしました。70人のボランティアが集まっていましたが、まだ10人足りないので、北ロンドンのセンターから7人のボランティアが助っ人にやって来るとのことでした。
最初の仕事は外周りの掃除でした。建物の外はゲスト(センターに泊まっているホームレスの人のことをこう呼ぶ)や通行人が散らかしたタバコなどのごみが散らかっています。私は3人のボランティアと一緒にここを掃除しました。キッチンから出たゴミを収集車に運ぶ仕事も手伝いました。暗いのでやりづらかったです。
次に、黄色いハイビス・ジャケットを着て、センターの入り口の見張り番をしました。このときのパートナーは不動産会社で働く25歳の男性でした。夜間にセンターに入れるのは、きちんと名前バッジを付けたボランティアと、紫色のリストバンドをしたゲストだけです。黄色いリストバンドのゲストは 昼間だけの利用者なので、夜間は入れません。
室内は禁煙・禁酒なので、多くのゲストが外に出て、タバコを吸ったり、隠し持っていたお酒を飲んだりしていました。そんな彼らとのおしゃべりは楽しかったです。あるゲストは1990年代にクロアチアから紛争を逃れて難民となり、ドイツで10年暮らしてからイギリスに20年住んでいると話してくれました。元は難民で今はホームレスという決して幸せではない人生を送ってきたはずなのに、話好きで楽しい人でした。
午前4時に夜食を食べました。夜食はボランティアのシェフが夜間スタッフのために作っておいてくれたベジタブル・カレーです。材料から全て手作りで作ってくれているので、凄く美味しかったです。夜食はゲストにはあげられないので、彼らには分からないように、食事と言わず「comfort」と言っていました。
次はコンピューター・ルームの仕事でした。こんな夜中に誰がコンピューターなんか使うんだろうと思っていたら、たくさんのゲストが利用していました。ゲストの人たちはそれぞれネット動画を楽しそうに見ていました。イーストエンダーズとかフットボールの試合とか、はたまた可愛い猫の動画とか。
ホームレスには夜寝ない習慣の人が多いのだそうです。夜は酔っ払いに絡まれたり暴行を受けたりする危険が高いので、昼間の人通りの多いときの方が安心して眠れるのだとか。
次は、ゲストの立ち入りが禁止されている部屋のドアを見張る仕事をしました。ここを通るスタッフも、バッジを付けているかどうか確認します。この仕事は簡単でした。パートナーは若干19歳の青年。オックスフォード大学で数学を勉強しているそうです。こんな若い人がホームレスの問題を真剣に考えていることに感動しました。
次は、ドアノブの消毒をしました。利用者の細菌感染を防ぐため、期間中は1時間ごとに消毒チームが殺菌スプレーを持って施設内を廻り全てのドアノブを消毒します。眠気覚ましにはちょうど良い仕事でした。
最後に再び、ドア見張りの仕事をしました。このときのパートナーはパリ出身のフランス人女性。彼女は20年ロンドンで暮らしているとは言え、フランス訛りの全くない完璧な英語を話すので驚きました。誰と会ってもフランスのことを聞かれるのが嫌で、相当に努力してフランス訛りを消したそうです。そうすれば、もっと大事なこと、チャリティの話がすぐに出来るから。
朝の8時でようやく夜間シフトを終了しました。眠い!疲れた!!
センター最終日
夜間シフト明けの日中はほとんど眠ることなく、疲れが残ったまま3日目の仕事に行きました。クリスマス・センターの最終日です。この日、全てのゲストは朝食を済ませて10時半までにここを去らなければいけません。
まずはゲストの寝室を片付ける仕事をしました。180人のゲストが寝ていたので、使用済みの毛布と枕が山ほどあります。これを全部畳んで、簡易ベッドも全て解体してトラックに詰め込まないといけません。毛布からドラッグの注射針が落ちるといけないので、畳む前に注意深く扱うように言われましたが、実際に針を見ることはありませんでした。
寝室には、路上に戻りたくないゲストが何人かまだ残っていました。ひとりのゲストはぐっすり眠っていたので、シフト・リーダーに起こされて早く朝食を取るように言われていました。彼の顔は傷だらけでした。
片付けた後の寝室には、ゲストが忘れたか残していったセーターや歯ブラシ、片方だけの手袋、松葉杖(!)などがありました。寝室はとても簡素で、私には居心地が良さそうには見えません。でも路上で寝ることに比べたら、ずっとずっとマシなのでしょう。
寝室の仕事が終わって階下に行くと、そこではたくさんのゲストが泣いていました。怒っている人もいます。みんなここを去りたくないのです。
この1週間、ここは彼らのホームでした。安全な寝床があり、日に3度の食事があり、たくさんの仲間や、優しいスタッフ達、親切なアドバイス、娯楽もありました。でも今また、寒く危険な路上生活に戻らなければならないのです。遠くからやって来たゲストは、ミニバスに乗せられて元居た場所に戻されました。ローカルのゲストはそのまま歩いてクロイドンの街並みに消えていきました。彼らはどこへ行く当てもないのですが。
次の仕事は、センターの入り口の見張り番でした。夜間シフトでここを担当したときは、入ってくる人をチェックする仕事でしたが、今度はここに入ろうとする人を追い返す仕事になりました。
このときのパートナーは、ロンドンの某有名金融企業で働く男性でした。彼は会社の仕事は嫌いだけれど、趣味でやってそこそこ成功しているトリビュート・バンドでキーボードを弾く仕事が楽しいと言っていました。
最後にクリスマス・ツリーを片付けました。この部屋でゲストは、お茶やコーヒーを飲んだり、卓球をしたり、ビンゴやカラオケを楽しんでいました。クリスマス・ツリーは飾りを外され、小さく切って運び出されました。何百とあったイスとテーブルも3階の教室に戻されて、かつてコミュニティー・ルームだったこの部屋は空っぽになりました。
部屋と廊下を全て綺麗に掃除して、センターは元通りの学校になりました。ここが180人のホームレスの宿だったなんて、もう誰にも想像出来ないでしょう。確認にやって来た学校のケアテイカーも驚いて感心していました。
Crisisで働けたことは本当に良い経験でした。 出会ったたくさんのボランティアの人々は、18歳から75歳という幅広い年齢層で職業も様々ですが、誰もがとても優しい人でした。私も少しでも誰かの助けになれたのなら嬉しいです。
でも、ゲストのみんなが路上に戻っていくのを見るのは心が痛みました。みんな、ボランティアに心から感謝して去っていきました。誰一人として、自ら好んでホームレスになったわけではないのです。抜け出したいと思っていても自らの力では抜け出せないのです。私たちは同じ社会に住む彼らの存在を決して忘れてはいけません。この国が本当に成熟した社会であるのなら。
本来ならば国が彼らを助けるべきなのに、チャリティ団体やボランティアの人々がその役割を担っているというのは、大変残念です。でも、もしあなたがこれを読んで、次のクリスマスにCrisisでボランティアをしてみたいと思ったら、ぜひ11月頃、Crisisのウェブサイトを調べてみてください。きっと素晴らしい経験が出来ると思います。
以上で、夫の体験記を終わります。読んで頂いてありがとうございました。長くなってしまって、ごめんなさい。これでも結構削ったんですよ。(^^;)
とりあえず、全部読んでくださった方も、飛ばし読みしちゃった方も、ひつじちゃんクリックしてくれたら嬉しいです。よろしくぅ~♪
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‘ふわりいぎりす’は、イギリスにいる日本人ライターたちが気が付いたこと、発見したこと、知っていること、思ったこと、教えたいこと、気になることなど、ちょっとだけお伝えするウェブマガジンです。
ご主人の貴重な体験をシェアして下さりありがとうございます。
胸が詰まり、身につまされる思いでした。
確かに日中、街で寝ているホームレスの方々を見かけますが、そのような理由だったのですね。
ガレッジセールの売上を全額、Crisisに寄付しようと思います。
Shippoさん、コメントありがとうございます。その上、寄付までしてくださるなんて!夫に伝えたら喜んでいました。
以前に永住権のところでコメントをさせていただいたものです。
私はEuston駅に近くに住んでいて、数年前にこの団体がクリスマス期間閉業になったEuston駅コンコースを使ってクリスマスパーティーをホームレスの方々に提供した時にものすごく感銘を受けた記憶があります。
都会に住んでいると他人と話をしなくなりますし、特にうちのあたりはジプシーホームレスのメッカなためほとんど彼らに目もくれない日々を過ごしていますが、この1年、少しずつ勇気をもって路上で暮らしている人と接触をするように心がけています。
Big Issueを買うとか、朝に目があったらおはようといってみるとか、スーパーに入るときに入口に物乞いをしている若者がいたら「何か(スーパーで買い物できるもので)お入り用のものはありますか?」と聞いてみたり。都市部には精神をきたしている方も大いので最新の注意は必要かと思いますが、私が180cmを超える男性である日こともあってか今のところは怖い思いをせずに済んでいます。
私は西洋人の「弱きは見境なく助けるべし」というクリスチャンな考え方になかなかなじめず、典型的な日本人の「ああいう人たちはなるべくしてなった」という意識の撤廃に苦労しましたが、自分が人を助けらられる立場で生活できているという事実に感謝すべき。という思いから少しずつ行動できるようになりました。
Crisisには参加したいと思いながら日々の生活に追われて何も行動にうつせてなかったので、ご主人のレポートは大変参考になりました。貴重な情報をありがとうございました。
通りすがりさん、ありがとうございます。
「自分が人を助けらられる立場で生活できているという事実に感謝すべき。」って本当ですね。
路上生活の人たちに声掛けをしているなんて、なかなか普通の人には出来ないことですよ。
私なんてBig Issueを買うだけでも、凄く勇気がいります。
長身の男性でいらっしゃったんですね。確かにそれは怖くない!