遠い日本

Japanese food Tazaki Yutaka Harvest Campaign



今年は、いろんなことがありました。でもまぁ、振り返ってみると、忘れてしまいたい嫌なことも、箱に入れてリボンをかけたいような思い出も、天秤にかければ重みは同じくらいかな、と思えば、まあ例年とそう変わらないような気もします。

以下は…忘れてしまいたい方の思い出です…聞いてやって。

3月には日本に行きました。その時の顛末をだらだらと書いたことを覚えていてくれる人もいるでしょうか。(お暇な方はこちらをどうぞ)

帰ってきたらロンドンはロックダウンの真っただ中でした。

実は今年の初め、コロナ禍がここまで拡大、継続し、世界を変えることになるなんて、想像もしていなかったころ、6月に家族で日本に行こうとチケットを取っていました。

6月が来ました。フライトはキャンセルです。チケット代は返金されました。

9月。ほんとなら今年から大学生になるはずだった次女は、オンライン授業でパーティーもできないのに、行く意味ないと言って、ギャップイヤーを取って、入学を来年に延ばしました。「その間に日本に行く!」

おお、そうかい。今なら飛行機も飛んでるし、ちょっと涼しくなって秋の味覚が出そろう10月になったら行く?
英国人は今入国できないけど、あんた日本国籍あるしね。
パスポート申請しようと思って3月に日本から持ってきた戸籍謄本もあるのよ。謄本の期限は6か月だから、今なら間に合うわ!

ということで、ロンドンの大使館に、パスポート申請のため来館予約したいと電話しました。ご存じかと思いますが、コロナの影響で大使館は、スタッフが少ない、来館者数を制限したいってことで、開館時間だからって行っても入れてもらえません(昨日から電話予約もなくなってオンライン予約のみになってるようです)。リストに名前がないと、いかついアフリカ系バウンサーにブロックされます。ちょっとナイトクラブ気分?ちがうって…

電話がやっとつながって…

「パスポート申請をしたいのですが」

「次に空いているスロットは10月xx日(ほぼ三週間後)になります。」

「持ってる謄本の期限がそれでは切れますが」

「じゃあ、また取り直してください」

「…(電話では見えない怒)。わかりました。日本から送ってもらうので、そのxx日に行きます」

「現時点で書類がそろっていないので、来館日は新しい謄本が来てから再度予約してください」

「…(電話では見えないさらなる怒)」

申請しても、受け取りはまたそれから3週間後やんか!いつになったら日本に行けるねん!てことで、一日でも早くイギリスから逃げ出したかったちこちゃんは、そこで博打に出るのです。

「娘よ、そんなに長くは待っていられない。松茸の季節が終わってしまう!英国から出国さえできれば、日本に着いてから謄本見せたら日本人ってわかるはずや。荷造り始めるで!」

とにかく、もう一度日本から謄本を取り寄せ、10月半ばの便を予約し、自主隔離用のairbnbを14日分予約し、当日は、自分のパスポート、娘の英国パスポート、そして謄本を握りしめて、ヒースローに行きのタクシー(£50)に乗り込みました。英国はクリスマス前のロックダウンパート2が噂されていたころです。ごめんね、みんな、大変だと思うけど、京都の紅葉の写真でも送るわ!

オンラインチェックインも終わってたので、あとは荷物をドロップするだけ。カウンターで2冊のパスポートを見せたら

「娘さん、これでは日本行きの便に乗せることはできません」

「あ、謄本あります。この子日本人なんです」

「それはここにいるだれにも読めません。パスポートがなければ、ここを通すことはできません」

かなり粘りはしましたが結局虚しく、すごすごと自宅に戻りました(さらにタクシー代£50)。airbnbは掃除料以外全額パー…でも、フライトは日付変更可能で、バウチャーをもらいました。

帰ってすぐ大使館に電話して、パスポート申請スロットを予約…三週間後の。
娘は数日間、口を聞いてくれませんでした。

そして、やはり大方の予想通り、英国は2度目のロックダウンが決定し、申請予約日はその初日に当たってしまいました。とは言え思いっきり重要な外出なので、電車を使わず車をバッキンガム宮殿裏に停め、無事申請を完了しました。11月の初めの話です。受領日はまたそのちょうど三週間後と言われたので、余裕を見てその二日後の便を即予約しました。11月中に出国できる!年末年始は日本で過ごせる!松茸は逃したけど、カニもフグもカキも、おせちも食べられる!

はずだったのに……。
日本も第三波が来たとかで…。コロナ地獄の欧州から来るってなぁ…ちょっとなぁ、ってことになって…。しかも行っても宴会できないし…。Go toも中止検討されてるとか…。
決め手は今は自宅から出ている長女がコロナにかかってしまったこと。彼女は日本に行かないし、会ってはいないけど、もし、万が一、私か次女が空港のPCR検査で引っかかったら…

文字通り、泣く泣く再度フライトをキャンセルして、バウチャーも再申請。今回はKLMだったんだけど、直接電話したら、二度ともすごく丁寧に素早く対応してくれました。どこぞのナショナルフラッグ「バ」とはえらい違いです。

ということで、遠い日本がますます遠くなってしまいました。
二重国籍のお子さんで、日本のパスポートを持っていない方、20歳になってから10年のやつを、とか、22歳の誕生日の直前にとか、いろいろ作戦はあるかと思いますが、あるにこしたことはない、わたくし、今回は強く思いました。

もうね、お父さんがね、「3月のわしの一周忌に来たらええねん」って言ってるんだと思います。その代わりなぁ、ほんまに行けるようにしてや、お父さん。ほんまにお願いします。そんで来年はいい思い出の方に天秤が傾きますように…
南無阿弥陀仏。


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About the Author: ちこちゃん

南ロンドンに住んでもう20年が過ぎてしまいました。来た当初に経験した愕然としたこと、怒りに髪の毛が天を突いたことなどがすっかり標準化してしまった今日この頃。日本人としてのアイデンティティを失わないよう頑張っています。

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2 Comments

  1. dalichoko 15th December 2020 at 10:00 pm - Reply

    イギリスから日本はファー・イーストですからね。
    遠いですね。
    (=^・^=)

    • ちこちゃん 16th December 2020 at 11:48 am - Reply

      コメントありがとうございます!
      まさに…極東…来年はもう少し近づきますように…

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