緊急車両を三回呼んだ夏の夜のお話 ①

Japanese food Tazaki Yutaka Harvest Campaign

「同僚と飲んで帰るから晩御飯は要らないよ。」

その日は珍しく夫不在の夜であった。

こんなチャンス滅多にない。

心弾ませ子供達とサイクリングに出た。ついでに外で夕飯を済ませワイワイガヤガヤ、家への最終コーナーを曲がる。

「くっさー!なんやこの臭い」

子供達が咳き込み出すと同時に化学物質を燃やした様な異臭が。我が家はどこだ?煙で一面灰色の世界である。

我が家は丘のてっぺんにある。

2階に上がり窓から通りを見渡すと一面灰色の世界の中にオレンジの炎が見えた。どうやら斜め向かいのフラットの1角らしい。

「ママー、誰かガイフォークスしてる。」「何でやねん!まだ8月やー!」

(ガイフォークスとは1605年に起こった火薬暗殺計画が失敗に終わった事を祝うイギリスの行事。毎年11月に花火や焚き火、キャンプファイヤー等が行われる)

と下2人が漫談を繰り広げていると…

バン!パーーーン!ボーン!!!

爆発音と共に炎が4階建てのフラットの屋根までの大きさになり外壁を包み込んだ。

「ぎぃやぁぁぁぁぁー」

自分たちと同時に近所の人達の悲鳴。

「ママー、怖い、怖い。ファイアー…」泣き出す末っ子

OMGとSH●Tを連発する上2人。

消防車呼ぶべきよね?呼ばないとあかんレベルよね?いや待てよ、誰か既に呼んでる?

ありがたいことに日本でも緊急車両に電話をかけた経験がない。ましてや異国で英語での緊急電話。どうしよう…

この歳で人生初の選択に迫られる。

携帯片手に

イギリスの消防車って何番?

恐怖。パニック。緊張。+ 英語でなんて説明する?と色々考えすぎて番号が全く出てこない。

119 ? 991 ? 110 ? あっ、111?

NHSのメディカルアドバイス番号にお世話になりすぎて111が頭でグルグル。手がガタガタ。ブルブル。

とあたふたしている横から

「もしもし〜私は〇〇に住んでるんですが目の前が煙で覆われていて炎が見えます」

流暢な英語で1番上の17歳がちゃっちゃと電話し

「既にたくさんの人から通報ありらしくて消防車がもう向かってるって」

と…

その矢先、目の前に消防車が3台到着。

あっという間に鎮火。

あー良かった。怖かったねー。

と子供達に言うと同時に手が震えて番号が出てこなかったチキンな自分が情けなくて凹む…

次の非常時には冷静に対応出来る様にならないと。

ママ!イギリスでは999!消防、救急、警察、緊急通報は共通して999!

この時はまさか2時間後に今度は警察を呼び、さらなる恐怖に陥るとは夢にも思わなかったが…

21時10分 「ママ、外がうるさくて寝れない。誰か喧嘩してる」と下2人。

「家の前で誰かが脅されてる… 女の子が助けを求めて叫んでる…」と1番上の17歳。

次回に続く

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About the Author: くりのしん

イギリス南東部在住。3児の母。我が家の発達凸凹ちゃんに宇宙へ連れていかれる日々。オタ活と空手で絶賛ストレス発散中。

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